(写真提供:Re:animation)
「中野サンプラザ」解体めぐり攻防 音楽業界からも惜しむ声 – デイリー新潮(WEB版)
先日、デイリー新潮にこのような記事が掲載、その後Yahoo!ニュースにも配信され、大きく拡散されました。また、それ以前にもこの件は毎日や日経のWEBメディアでも何度となく取り上げられており、区内に留まらない注目を集めています。かつて、これをほどの注視された区内の選挙があったでしょうか。
私は5月10日に発表した「なかのdeチャレンジ!市川みのるがチャレンジする区民との約束30項目」の中でも、『「サンプラザ」解体見直し!残すぞ活かすぞサンプラザ!!』として中野サンプラザの解体を見直し、「なかの」の文化交流拠点として活用するプランを掲げています。
さて、来る6月10日の中野区長選挙、そして区議会議員の補欠選挙に向けてSNSやニュースをチェックする中でこの問題にお気づきになった方もいらっしゃると思います。そして、果たして何が問題で、何を選択すればよいのかと迷っている方もいらっしゃると思います。そこで改めて、「45年の歴史を持つ中野サンプラザを解体し、1万人収容のアリーナを建設するという政策がいかなる問題を抱えているのか」特に区民の生活に直結する点に絞って2つ取り上げてみたいと思います。
問題1:事業スキームがない…どころか、周囲の安全が考慮されていない
この問題を取り上げる時に、まず真っ先に挙げられるのは「事業スキームがない」ということです。要するに、建てたは良いもののどのように運営していくのかという方針や方策がないということです。巨大な建築物は維持管理するのにも莫大なコストが掛かりますから、上手くいけばよいものの失敗すれば数十年に渡る負の遺産となります。そのリスクへの検証がなされていません。
しかし、今回はもう少し目先を変えて、たとえ新アリーナ自体の運営が上手くいったとしても街は大きな問題を抱えることになるということを指摘したいと思います。
まず、都内で1万人を収容する施設と言えば何を思い浮かべますか?
まず真っ先に浮かぶのは1つは皇居のほとりに建つ、日本武道館でしょう。そして、代々木公園にある代々木第一体育館はまさに1万人クラスのアリーナです。そのような建物が中野駅前に建設されると想像してみてください。なお、建設予定地は中野区役所移転後の敷地と解体した中野サンプラザの跡地を区画整理によって一体化させた場所が予定されています。しかも、その敷地内には地上30階建ての高層ビルも建設が予定されています。
そんな中野駅北口はどのようになるのか、地図で確認してみましょう。
黄色で囲った場所が現在の中野区役所とサンプラザが建つエリアです。西隣には完成したばかりの四季の都市があり、東側には中野ブロードウェイや商店街が広がります。駅に近く、狭隘な場所であることが分かります。では、この黄色枠と先ほど挙げた2つの1万人規模の施設を同じ縮尺で重ねてみましょう。
まずは、中野サンプラザで公演したアーティストが次に目指す場所、日本武道館(最大収容キャパシティ14,471人)です。
北側の門から日本武道館の本体がちょうど収まるくらい。しかし、左下にかなりたくさんの自動車を停めることができる駐車場が用意されています。また、立地特性として近隣の町とは皇居のお堀で仕切られており、南部には北の丸公園が隣接していることから、商業地や生活地とは隔離されています。
続いて、都内の1万人規模のアリーナの代表的存在である国立代々木第一体育館(最大収容キャパシティ13,243人)です。
こちらは体育館の建屋がようやく収まる程度。そしてやはり大きな駐車場が用意されており、第二体育館を含む敷地はかなり広大に確保されていることが見て取れます。また、北の道路を渡れば、代々木公園が広がっています。
このように「1万人規模の建物」の運営にはそれがようやく建てられる分だけの敷地では不十分です。イベントが催される前後にはそれだけの来場者を見込むわけですから、屋外にも同じかそれ以上の人を安全に誘導・待機させられるだけの“余白”が必要です。また、コンサートなどの大規模な設備を必要とする催しがあれば前日や深夜の設営作業が必要になり、大型車両が何台も出入りします。また、関係者の多くは自動車で来場しますから、相応の駐車場が必要とされます。
これらは危機管理上のリスクとして街にのしかかります。ただでさえ歩道の狭い中野駅周辺です。しかも、駅前再開発で増えた2万人の昼間人口に対するJR中野駅の改札口地の追加などの対応策は後手に回っています。確かに、「年に数回のお祭り」ならば地域の皆さんのご理解とご協力によってはやってのけることができるでしょう。しかし、1万人規模の施設が経済的価値を生む程度に稼働するということは、それが日常になるということです。
「絶対に不可能である」とは言いません。
しかし、想定される事態とそれに対する対応策を住民に説明することもなく、またそのリスクを十分に検証することもなく、「1万人アリーナ建設ありき」で進めて良い話ではないのです。だからこそ、今、この計画を停止させなければいけません。
問題2:壊したら二度と取り返せない文化の象徴
中野サンプラザは今年で開業45周年を迎えました。50年を超える歴史を持つ中野ブロードウェイと並び建つ中野が作り上げた文化の象徴です。
林昌二さんが設計された特徴的な形をもって語られることの多い中野サンプラザですが、より本質的にはこの場所で感動を得た多くの方々が、それを建物の形と共に記憶されていることこそがサンプラザの価値の根源です。
多くの歌手がその舞台を踏んだ中野サンプラザホールは日本音響家協会と日本劇場技術者連盟と共同で実施する『優良ホール100選』にも選ばれ、2222人というちょうど良い規模感から、メジャーを目指す人の一種の登竜門となっています。それこそ、知名度・ブランド価値共に先に1万人規模の代表として取り上げた日本武道館や代々木第一体育館に勝るとも劣らない存在感です。
これから本格的な高齢化社会・人口減少社会を迎えるにあたって、私は見込みの立たない大きな箱物の建設ではなく培って来た文化こそ街の発展に寄与するものと考えます。ですから、「なかのdeチャレンジ!市川みのるがチャレンジする区民との約束30項目」で、サンプラザ歴史コーナーの設置(その活用例として、数々の公演等に使った資料展示や新進気鋭のアーティストやクリエーターの展覧会の開催)を提示しています。
活用の仕方は、様々な方の知恵を借りることでもっと魅力的なものが実現できることでしょう。将来的にいくらお金が掛かるのか分からない、どの程度街に安全面での負担が掛かるのかも分からない1万人規模のアリーナよりも、サンプラザが重ねてきた歴史は遥かに確実に街の活気に寄与してくれます。そして、中野サンプラザで紡がれた輝かしい歴史の数々を見た次なる若者が中野を目指すのです。
音楽ホール以外の中野サンプラザ
最後に少しだけ、音楽ホールとして以外の中野サンプラザについて触れます。
中野サンプラザは複合施設として、結婚式場・研修室・レンタルオフィス・宴会場・ホテル・レストラン・音楽スタジオ・ボウリング場・インターネットカフェ・フラワーショップなどの様々な施設が含まれています。
数千規模の着座できるイベントホールは近年は閉館が相次いでおり、目下サンプラザの需要は高まっており、今解体する道理がありません。では、これら他の施設はどうかというとやはり時代によって入れ替わってきました。
それは今後も変わらないことでしょう。耐震補強工事やリノベーションによって歴史ある建物を維持し、しかしその中はには時代に合った最新の施設や店舗へとリフレッシュさせていくことは十分に可能です。むしろ、それこそが区民が、或いは都内の多くの方にとっても馴染みやすい中野サンプラザではないでしょうか。
しかし、田中大輔区長は2か月後に任期満了を控えた4月5日に記者会見で2024年度前後に取り壊す考えを示しました。今、止めなければなりません。
区民が大事に育ててきた中野文化の象徴を軽々に破壊させてはいけません。その選択の日が間もなくやってきます。区民の皆さんの選択によってそれは決まります。
私、市川みのるは中野サンプラザは残します。活かします。
1人1人が悔いのない判断をお願いします。
#なかのdeチャレンジ #市川みのる #中野区長選挙