中野のキーマン100人に会う

【中野のキーマン100人に会う:その1】大月浩司郎(フジヤカメラグループ会長)努力なき発展が育んだ「中野らしさ」。次代に必要な努力の形とは?[後編]

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[前編から]
中野サンモール北口駅前広場から入って左側5軒目に僅か7坪のお店からスタートした父上創業のフジヤカメラ。2代目の大月浩司郎さんは中古カメラで中野をメジャーにした中野を動かすキーパーソンの一人である。昭和21年(1946年)生まれには見えない若々しい行動家である大月さん。個人店が大型量販店と勝負をしても叶うわけがない。そこで取り扱いの少ない中古カメラに目をつけると、口コミで全国からカメラマニアが中野に集結。現在のような繁盛店への道の第一歩を記した。当時は地元の地域活動等には目を向ける暇もないほどに忙しく働いた結果、今では中野の顔ともいえるフジヤカメラへと父上から引き継いだカメラ店を発展させた人物である。

本インタビュー企画の1人目として、戦後から現在に至るまで、中野で生まれ、中野で暮らし、中野商いをしてきた大月さんに話を伺った。

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大月 中野らしさって、自分たちの努力の結果ではなくて、外からの評価なんですね。安心な街だとか、”余所行き”じゃないところが良いなとか。それも、年と共に少しずつ変わっていきます。5年後はまたガラッと変わっていると思います。そんな中で「らしさ」に拘るっていうのは、色んな人の顔がパッと思い浮かぶことや、その地域で大切にしたい想いという地元愛的なものだと思うんですよ。

うちはずっと量販店がやってない中古のカメラ屋で、色んな人が遠くからきてくれるんですよ。むしろ遠くからきてくれるお客さんが圧倒的に多くてね。だから、中野をこうしたいって想いは商売の面では非常に希薄でした。そういうことを考えるようになったのは最近ですよ。30代の頃は「中野の世話になんてなってねえや!」と思っていましたけど、60歳を越えて商店街の理事長なんかをやってみると、皆さんのお陰でってなるよね(笑)。

市川 郷土愛だなあ(笑)

大月 一番心配なのは災害。それに事件や事故なんかも心配。「中野は危ない街だよ」と、住んでいる人も来る人もそういうレッテルを貼られちゃ、がっかりします。中野サンモール商店街も人通りは多いけど、疲れたら座れるベンチがいくつかあります。お年寄りでも安心して入れる安いお店もいくつかあります。人が増えれば増えるほど危険性が高まりますよね。その時にチェーン店のスタッフさんでもちょっとした街のトラブルに対応してもらうだとか、110番や119番をするとか、せめてそのくらいは商店街一体になってやらないといけないと思っています。中野にはその気風が残っていていますから。

中野の将来について伺えば「常に変身進化する中野の街(文化)であって欲しい、そして安心して暮らせる街であることが一番!」と豪語する。便利で快適性に富んだ街になるよう街中に休憩の出来る腰掛けベンチがあったり、高齢化時代にあって年配のお客様が安心して歩ける道路(商店街)の実現など顧客本意の思いは人一倍。サンモール商店街理事長を受けてからは更に地域の大切さを感じたと実感を持って語る。IMGP2775

大月 中野サンモール商店街は駅前の立地で戦後から賑わっていて、幸いなことに財政的には心配がない状態です。会員さんも減ることはなくて、空き家が出てもすぐに次のお店が入ってきます。ただ、お金を貯めてばかりいても仕方ないので有効に使っていきたいですね。例えば、近隣の商店街との協力体制。一番街と連携して防犯カメラ入れるとか、三番街の予算が足りなければサンモール商店街の予算で三番街の両端くらいまでカメラをつけようとか、いろんな事ができると思うんです。

隣接する独立した商店街も昔はサンモール商店街だったんですよね。それが独立して、組合は増えるけど個々にやっていくにはどうやっても無理があるので、じゃあサンモールで一括してやれば良いんじゃないかと。一番街は一番街ではあってもいいんだけど、会計と雑務はサンモール商店街で2人くらい雇って細々したことは全部やりますよと。個々に汗だくになってチラシ配らなくても双方で協力して隅々まで配りましょうとかね。

市川 それは良いことですよね。

大月 それぞれの商店街のことはそれぞれで決めるけど、雑事はお互いに請け負いで安く融通できると思うんです。

市川 これからの商店街はやっぱり”線”ではなく”面”だと思うんですよね。それは、サンモール商店街に周辺の商店街が屈してしまうのではなくて、独立はしながらも、細々したことは委託でやって貰って効率性を高める。そういう機運はもうあるんじゃないですかね。

現在の中野サンモール商店街の賑わいの原点に中野駅前の立地条件があることを忘れてはならないと商店街の歴史を振り返る。交通結節点の利便性から常に人が集まる集客力が商店街自体の自助努力亡失のリスクを忘れない気持ちが現在のサンモール商店街運営の上で十二分に発揮されている。今後の商店街経営は線から面へと進化をし顧客サービスを面で捉え、複数の商店街が一体化したサービスの提供出来るエリアマネジメントの必要性をも訴える。IMGP2740

市川 最後に、区議会や中野区に求めるものってございますか?

大月 色んなことが伝わってこないですね。先生方の個々の報告は個人や議連のサイトや報告書を見れば分かります。ただ、もうちょっと関心が持てる報告ができるといいですね。会派の特色があってもいいと思います。議会の傍聴なんかも「保育園についてはいつ頃議論しますよ!」なんて予め言えば、お母さん方は関心があると思うんです。

市川 保育園の問題や今後のサンプラザの開発について何かは皆さん関心があるでしょうね。

大月 そういう日程をもっと知らせるとか。商店街の議題でも、そういう事前情報を各組合に配布したら半分は捨てられるかもしれないけれど、関心ある人は見に行くと思いますよ。僕もあまり時間はないけれど、1時間やそこらであれば、関心がある議題は覗いてみたいです。

それから、中野区役所には若くて優秀な人がいっぱいいるそうじゃないですか。ただ、公式な場では、限られたことしか言えないと思います。そういう人達と本音で話すことができれば引っ張りだこになるんじゃないですかね。今は、必要に迫られて繋がりができていますが、遠慮なく本音で言い合えるような場所はもっともっとあって良いんじゃないでしょうかね。

市川 そうですね。行政の若手職員はよくものを知っています。民間の方が彼らから得るものもたくさんあると思いますね。組織の縦割りもあって、それを越える知見を自分から口にするのはいけないんじゃないかということもあるでしょうが、オフ会と称して一同に会して、酒を飲んで語り合ってという場があれば、そういうところから生まれるものも多いかもしれませんね。

大月 市川さんにも、そういった人達を引きあわせていただきたい。引きあわせたら「ここで僕は失礼するので勝手にやって頂戴ね!」とね。この人はこういうことに造詣が深くて熱心だとか、市川さんはよくご存知だと思うんですよ。だから、サンモール商店街には彼をぜひ引きあわせたいとか、こんなことをお互い勉強したら良いんじゃないかとか、そういう接点はぜひご紹介いただきたいですね。癖のある方もいるけれど、一歩踏み込むと「何だこいつ思い面白いじゃないか!」となると思うんですよ。

IMGP3263後に中野区議会への要望を伺うと真っ先に傍聴したい!とのご回答。特に中野の街が大きく変わろうとしている昨今、興味深いテーマは沢山あれど、それらがいつどこで議論されるのか?また、その内容を情報としていち早くキャッチするためにも区民は議会を傍聴する必要があると。であるならば、議会も更に緊張感と自らを磨いた上で発言の場に参加することにもなること、そしていかようにか議員本人が発信する情報媒体であることを改めて自覚した次第。どんなに忙しくても常に時代にマッチしたものを追い求める姿に深く感銘を受けた。

大変ご多忙の中60分にも亘るインタビューに応えて下さったことに感謝します。今後の益々のご活躍、お祈り申し上げ、本企画は次回へと繋げます。次回登場は昭和新道商店街で立ち飲み居酒屋「パニパニ」を経営されている、長谷部智明さんにご登場いただきます!

関連リンク
・フジヤカメラ店 http://www.fujiya-camera.co.jp/

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