きょうは硬いお話をします。まず、『日本国憲法 第九十二条 、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。』いわゆる地方自治法です。
地方自治法上、一般的に『地方自治の本旨』とは、「地方自治の本来のあり方」のこととされ、「団体自治」と「住民自治」の2つの要素からなるとされています。「団体自治」とは国から独立した地方自治体を認め、その自治体の自らの権限と責任において地域の行政を処理するという原則のことを指し、「住民自治」とは、地方における行政を行う場合にその自治体の住民の意思と責任に基づいて行政を行うという原則のことを指します。要するに、『地方自治の本旨』という言葉には、2つの意味の「自治」の概念が、含まれていることになります。この2つは、しばしば、車の両輪に喩えられ、一方の実現のためには他方の拡充が求められるという関係を持つことになります。いわゆる地方分権において進展したのは、自治体の権限の拡充(団体自治)にかたよっているとされ、住民自治の実現(わかりやすい言葉でいえば、身近な民主主義の実現)が、今日、要請されているのです。
では、「住民自治」とは、その自治体に暮らす住民や、その住民が選挙によって選んだ議員で構成する議会が機関として行政に関わることになるものと私は解釈します。本日のところ住民と議会のうち、住民の役割に目を向けて現在の中野区における「住民自治」を考えてみたいと思います。中野区は区内を15の地域に分割し、各地域毎に区民活動センターを設置しています。ここが地域住民の活動拠点になるわけです。中野区のセンター運営指針によれば、センター毎に地域から選ばれた運営委員(10名内外)が運営委員会を設置し、中野区は運営委員会に運営を委託する仕組みになっています。年間事業活動計画の企画立案運営と、運営委員会には盛りだくさんの地域活動を司る仕事が生じますが、運営委員は無報酬のため、活動センターの事務のバランスが崩れることのないよう、中野区が行なう地域コーディネーター養成講座を受講した方の中から事務局員を運営委員会が独自に選考し、一年毎の年間契約を結び最高連続4年間の範囲でその事務を任せることになります。
ところで、こうした仕組みになりますと、活動センターの設置主体者は中野区。事実上の運営は運営委員会ということになりますので、当然のごとく「住民自治」の独立性を住民側は主張されることになります。要するにこの主従関係はどのようなものであるかが問われる場面に突き当たります。その一つが事務局員の雇用の問題です。事務局員は有給で、最高連続4年まで年度毎の契約を結び事務に従事してするのですが、運営委員会が更に人材として同一の人材との雇用関係を4年以上にわたって結びたくても、労働契約法の縛りにより5年以上の雇用は困難になります。なぜか?これは労働契約法上、非常勤職にあっても雇用関係が連続して5年を超えた場合は常勤雇用になってしまう法律の壁が運営委員会の独自性を妨げることになります。さて、此の時点で運営委員会側から事務局員の雇用の継続を問われた場合いかにしたらよいか? 今、中野区と中野区議会では検討が進められております。