中野のキーマン100人に会う

キーワードは”昭和”。懐かしさと合理性の合わせ技で中野を導く。【中野のキーマン100人に会う:その3】土橋達也(土橋商店)[後編]

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[前編]から
土橋商店は、雑貨やアパレルなどを卸売りするBtoBサイト「超激安ドットコム」を運営している。その表紙に記されているが『気絶安!』とは名言ではないだろうか。会社創業36周年を期に創業者が会長職に就き、社長職は息子の土橋達也さんに引き継がれた。6月7日(日)に小生も発起人の一人に加えていただき、社長就任披露パーティーが盛大に開かれ、”2代目”は毎日気絶安に励んでいる。昭和47年(1971年)の第二次ベビーブームに中野で生まれ、中野で育ちであり、中野の地から事業拡大に励む土橋達也さんに【中野のキーマン100人に会う】シリーズ第3弾にご登場いただいた。IMGP6584_R市川 中野の象徴の1つである中野サンプラザを50年周年をメドにして建て替えようという計画があります。この建物を買い取るのに中野区は約50億円の借金をしました。そして、運営を株式会社中野サンプラザに委託していますが、毎年の利益が1億円くらいしか出ていません。これでは後世にツケを残してしまうので、利益が見込める施設を建て、土地を有効活用しないといけません。中野駅前に、今のサンプラザに代わる施設ができるとしたら、どんな施設が良いと思いますか?

土橋 中野サンプラザは僕もよく使います。中野に始めてきた人を連れて行くにも最適で、まさに象徴なのだと思います。でも、利益が1億円しかないというのは、何かやり方に問題があるということですよね。ホテルも利用者は多いですから、部屋の広さを今の1/3くらいにして1泊5000円くらいで、安く泊まれるようにすれば売上は伸びます。リーズナブルなビジネスホテルチェーンを入れても良いかもしれません。

地下もボウリング場ではなく、昭和新道商店街にあるような小さくて味のある飲食店をたくさん誘致すれば効率が上がります。地下の広いフロアにお店を詰め込んだら相当入ります。中野の昭和何十年代かのイメージを作ったロケーションで、昔の中野を味わえる演出があったほうがいいと思います。それこそ、昔の天神の風景でもいいです。中野はお酒を飲むのが好きな人が多いから、毎日入り浸りますよ(笑)。

市川 せっかく中野サンプラザに来た人が、駅が近くて便利がいいものだから、すぐに電車に乗って新宿に行っちゃうんですよね。地下に飲食店があり、ホテルも安くて部屋数に余裕があれば、イベントに来たお客さんがご飯を食べて、宿泊も期待できますね。

土橋 そこで開催するイベントは色々なものが考えられます。他所で成功しているものはどんどん引き込んじゃえばいいんです。

イベントの観客や観光客を受け入れられる余裕のあるホテル機能と美味しいものを食すことが出来る飲食街があれば、様々に開催されるイベントともシナジーを見込む事ができる。演劇、コンサート、コンベンション、スポーツ等、集客力のあるコンテンツの呼びこみと、中野ブロードウエイの地下街のような昭和の香り漂うゴミゴミした飲食ゾーンを組み合わせる発想に驚かされると共に、土橋さんが中野の下町感を大切にしていることを実感した。IMGP6536_R

市川 さっきから終始一貫しているのは”昭和”というキーワードですよね。私たちの世代にとっては、昭和のイメージは高度成長の真っ只中、その中でも強烈に印象に残っているのは東京オリンピックです。そして、5年後にまたオリンピックがまた東京で開催されます。中野に会場が来るわけではないけれど、オリンピックを見据えて中野の街として、どんなことをやったらいいと思いますか?

土橋 おそらくオリンピックで来日する方はパンフレットを見て、サンモール商店街や中野ブロードウェイに押し寄せますよね。それをあのストリートだけで終わらせてしまうと、もったいない。だから、来日した人向けに、観光バスを用意して、外国語でガイドしてあげたらいいと思いますね。ツアーで中野全体を見て良い街だという印象を持って返って貰うことが必要だと思います。

市川 ブロードウェイをめがけてきた人たちを観光コースに乗せてもしまうわけですね。そして、思わぬ発見をして、それを思い出として持って返ってもらうと。

土橋 そうです。ホテルまで迎えに行って車に乗せて、喜びそうな名所や店を巡って買い物をして貰っても良いです。いくらガイドブックを配っても、JRから西武線に乗りかえてっていうと大変です。だから、観光コースにしてしまった方が良いですよ。無料でいいから。

オリンピックに訪れた外国人観光客を、全国的に有名になった中野ブロードウエイを種にして中野に迎え入れ、更にバスに乗せて中野巡りをする構想は中野駅周辺に注目が集まっている現状を打開する妙案だ。中野区内に存在する名所旧跡、美味いもの店を、能動的にガイドすべきとの意見には私も大賛成。特に南北交通が脆弱な中野にあってはバスの必要性を力説したいし、地元で営業する路線バス事業者の協力も仰げば出来ないことはないはずである。IMGP6454_R

市川 中野区はそういった様々な計画を策定します。そして、区議会は中野区が年間使う予算、つまりお預かりした貴重な税金をどういう風に使うかを議会で決めていきます。こういった区議会や中野区に対して、今後期待すること、要望することがあれば伺えますか?

土橋 今、中野では街を活性化する為のイベントが凄く増えています。ただ、中野駅周辺に偏る傾向があります。中野セントラルパークができたので、そこを活用してというものも多い。ただ、やっぱり沼袋や江古田それに南の方も、もう少し中野全体に拡がって欲しいと思います。

地域ごとのイベントが増やせたら、中野全体の活性化に繋がります。それは、各商店街単位ではやっているんですが、そのレベルだと告知が足りなかったり、ノウハウが無くて、地元の人が集まって終わってしまっています。しかし、例えば、中野駅周辺でやっているような、東北のねぶた祭を今度は鷺宮でやってみるという仕掛けをしてみてはどうでしょう?或いは、中野ブロードウェイとみなかみ町のような里町連携を今後も行うのであれば、野方の方にまで展開してみるとか。

エリア単位の連携を図っていただけると、中野駅の北口に偏りすぎている状況が変わるのではないかと思います。

市川 均衡ある発展というのは大事ですよね。中心街から離れると情報が入ってこない、利便性が悪いというのではなくて、区内が平準化されると街としてはより良くなりますね。

土橋 「中野坂上でカーニバルやるよ!」という話があれば「じゃあ見に行ってみよう!」と思いますよね。大きなイベント各エリアでバランスよくやれたらいいですよね。それには、そのエリアに「何かやってやろう」っていう人物がいないとなかなか盛り上がらないとも思いますけれど。

市川 中心街にイベントが集まりがちな1つの理由として”ゆとり”があると思います。人通りが多いから、商店には一定の売上があって、余裕が生まれます。すると、その中から別のこともやってやろうっていう人が出てくる。一定の人が集まると”ゆとり”ができて、人の集まるところにもっと集まってきます。最初に人が集まらないと、なかなか”ゆとり”は持てないと思います。しかし、土橋商店って人が集まるんだよね。なぜなら激安だから。そして、達也さんのように色々と発想できる訳です。

今後は、西武線も線路の地下化が進んで、駅の周辺も構造が変わり、イベントを仕掛けられる用地もできてきます。我々もそういったところ、頑張っていきますので。ぜひ、達也さんもしっかって頑張って、いろいろと仕掛けて下さい。

土橋 はい。頑張りますので、ぜひ場所の確保だけは色々とご協力いただきたいです。「ここでやっていいよ!」と言ってもらえたら、後はやっちゃいますんで(笑)。

中野駅周辺に活性化の力点が置かれて区内に点在する名店や名所に来街者の足が向かないこと憂う土橋さん。ご自身が経営する土橋商店は沼袋に位置している。今後、西武新宿線の地下化が完了に合わせ、駅周IMGP6785_R辺でのイベントが可能になれば…と、集客には自身を見せる。これは沼袋に限らず区内全地域共通であることであろう。街づくりは行政にばかり頼らず個人の力を発揮することから始まることを信じて止まない土橋さんに大きな期待を寄せたいものである。

次回は、今回のインタビューの中でも登場した「おこのみっくすマガジン」を発行するエフ・スタッフルームの代表である藤原秋一さんにご登場願います。本企画で初めて、中野生まれではない方の目に過去・現在・未来も中野がどのように映っているのか、非常に楽しみです。

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